【SIerとは?】プロダクトマネージャーが知っておくべき基礎知識
最終更新日:
2024年8月2日
ライター:
PM Career編集部
転職・キャリア情報
「SIer」という言葉を耳にしたことはありますか?
IT業界でキャリアアップを目指すプロダクトマネージャーの皆さんにとって、SIerは切っても切り離せない存在です。しかし、その実態については、漠然としたイメージしか持てていない方もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、プロダクトマネージャーの皆さんが知っておくべきSIerの基礎知識について、わかりやすく解説していきます。SIerとどのような関わり方をするのか、注意すべき点などを理解し、プロダクト開発を成功に導きましょう!
プロダクトマネージャーとSIer、それぞれの違い
まずは、プロダクトマネージャーとSIerでは、どのような違いがあるのかを明確にしましょう。それぞれの仕事内容や役割の違いを理解することが重要です。
プロダクトマネージャーとは?
プロダクトマネージャーは顧客の課題を解決し、市場で価値を生み出すプロダクトの企画・開発・運営を行う役割を担います。具体的には、以下の様な活動を行います。
- 市場調査:顧客ニーズや市場トレンドを調査し、プロダクトのアイデアを創出する
- 顧客分析:顧客セグメントを特定し、それぞれのニーズや課題を深く理解する
- 競合分析:競合製品を分析し、自社製品の差別化ポイントを明確化する
- プロダクトビジョン策定:市場調査、顧客分析、競合分析に基づき、プロダクトのビジョンを定義する
- ロードマップ作成:プロダクト開発のスケジュールと目標を明確にするロードマップを作成する
- 開発チームへの指示:開発チームにプロダクトビジョンやロードマップを伝え、開発を進める
- プロダクトリリース:開発されたプロダクトを市場にリリースし、顧客に価値を提供する
- プロダクト運用:リリース後のプロダクトの改善や機能追加を行い、顧客満足度向上を目指す
このように、プロダクトマネージャーは、プロダクト開発のあらゆるフェーズにおいて中心的な役割を担い、顧客に価値を提供するプロダクトを生み出すことを目指します。
SIerとは?
SIer(エスアイアー)とは、System Integration(システムインテグレーション)を行う企業のこと。「システムインテグレーター」と呼ばれることもあります。顧客の企業に対し、情報システムの構築や導入を請け負うのが主な事業です。
- 顧客のニーズに合わせたシステム設計・構築:顧客の業務内容や課題を理解し、最適なシステムを設計・構築する
- 様々なIT技術の活用:ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなど、様々なIT技術を組み合わせ、システムを構築する
- システム導入・運用支援:構築したシステムの導入、運用、保守までをサポートする
- 幅広い業界への貢献:金融、製造、流通、公共など、様々な業界の企業に対し、システム構築や導入を行う
SIerは、顧客の業務効率化や競争力強化に貢献する重要な役割を担っています。
それぞれの仕事内容を比較
プロダクトマネージャーとSIerの仕事内容を、より具体的に比較してみましょう。
項目 | プロダクトマネージャー | SIer |
---|---|---|
役割 | 顧客価値を最大化するプロダクトの企画・開発・運営 | 顧客の要望に基づいた情報システムの構築・導入 |
仕事内容 | 市場調査、顧客分析、競合分析、プロダクトビジョン定義、ロードマップ作成、開発チームとの連携など | 要件定義、設計、開発、テスト、運用・保守など |
関わる人 | デザイナー、エンジニア、マーケター、営業など | 顧客企業、社内エンジニア、プロジェクトマネージャーなど |
このように、プロダクトマネージャーとSIerは、仕事内容や関わる人が大きく異なることが分かります。
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SIerの仕事内容をより詳しく解説
SIerの仕事内容は多岐に渡りますが、ここでは、一般的なプロジェクトの流れに沿って、それぞれの工程でSIerがどのような業務を行っているのかを解説します。
要件定義
顧客の要望を丁寧にヒアリングし、システムに求められる機能や性能、そして運用面での要件などを具体的に定義します。
顧客との認識をしっかりと合わせ、システム開発の範囲を明確にすることは、プロジェクトを成功させるために非常に重要です。要件定義フェーズでは、顧客の期待と開発チームの理解を一致させることで、後の開発工程におけるトラブルや手戻りを最小限に抑えます。
設計
要件定義に基づいて、システム全体の構成や詳細な仕様を設計します。これは、データベース設計、画面設計、プログラム設計など、専門的な知識が必要となる重要なプロセスです。
設計段階では、システムがどのように機能し、ユーザーはどのようにシステムとインタラクトするかを明確に定義します。この段階でしっかりと設計することで、後の開発段階でのトラブルを回避し、高品質なシステム構築を実現できます。
開発
設計書に基づいて、プログラミング言語を用いてシステムを開発します。システムの要件や目的、開発チームのスキルなどを考慮して、開発するシステムに最適な言語が選択され、Java、PHP、Pythonなど、様々な言語から適切なものが選ばれます。
開発段階では、設計書に沿ってプログラムコードを作成し、機能を実装していきます。テスト環境でプログラムを実行し、動作を確認しながら、バグの修正や機能の改善を繰り返します。開発が完了したら、本番環境にシステムを移行し、ユーザーに提供されます。
テスト
開発したシステムが設計書通りに動作するか、問題がないかを検証するプロセスです。単体テスト、結合テスト、システムテストなど、様々なテストを実施することで、システムの品質と安定性を確保します。
これらのテストを通じて、設計上の誤りやバグを早期に発見し、修正することで、より信頼性の高いシステムを実現します。
運用・保守
開発したシステムを顧客環境に導入し、安定稼働を維持するための運用・保守を行います。これは、システムが常に正常に動作し、お客様に快適なサービスを提供し続けるための重要な役割です。
具体的には、システムの監視、障害発生時の対応、バージョンアップ対応などを行い、システムの安定稼働をサポートします。
プロダクトマネージャーがSIerについて知っておくべき理由
プロダクトマネージャーの中には、「なぜSIerについて詳しく知っておく必要があるのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、プロダクトマネージャーとしてキャリアアップを目指すのであれば、SIerへの理解を深めておくことは非常に重要です。
SIerとの連携は必須?
自社で開発を行わない場合や、大規模なシステム開発を行う場合、SIerに開発を委託することがあります。その際、プロダクトマネージャーは、SIerと連携してプロジェクトを進める必要があり、SIerの仕事の進め方や文化を理解しておくことが、円滑なコミュニケーションの鍵となります。
SIerとの連携は、プロジェクト成功に大きく影響するため、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。具体的には、以下の点を意識する必要があります。
ポイント | 説明 |
---|---|
SIerの専門性を理解する | SIerは、さまざまなシステム開発の経験やノウハウを持っています。彼らの専門性を理解し、プロジェクトに活かすことが重要です。 |
明確なコミュニケーション | プロジェクトの目標や要件を明確に伝え、SIerとの間で認識のずれがないようにする必要があります。 |
定期的な進捗確認 | 定期的に進捗状況を確認し、問題があれば迅速に対応する必要があります。 |
信頼関係の構築 | SIerとの信頼関係を築くことで、より円滑な連携が可能になります。 |
SIerとの連携は、プロダクトマネージャーにとって重要な課題です。上記の点を意識することで、よりスムーズなプロジェクト進行を実現できます。
SIerの構造理解がプロダクト開発を円滑にする
SIerは、多重下請け構造を持つことが多く、開発工程の一部を別の企業に再委託しているケースも少なくありません。
プロダクトマネージャーは、開発体制全体を把握し、それぞれの企業との適切なコミュニケーションを図ることが重要です。SIerの構造を理解しておくことで、開発工程におけるリスク管理や、問題発生時の迅速な対応が可能になります。
SIerの構造を理解することで、以下のメリットが得られます。
メリット | 内容 |
---|---|
開発工程全体を把握できる | SIerの構造を理解することで、どの企業がどの工程を担当しているのか、開発の進捗状況を把握できます。 |
コミュニケーションを円滑化できる | 各企業との役割分担を明確にすることで、コミュニケーションの齟齬を防ぎ、スムーズな開発を進められます。 |
リスク管理を強化できる | 各企業の能力や実績を把握することで、開発工程におけるリスクを早期に発見し、対策を講じることが可能になります。 |
問題発生時の対応を迅速化できる | 問題発生時に、どの企業に連絡すれば良いのか、責任の所在を明確にすることで、迅速な対応が可能になります。 |
SIerの構造を理解することは、プロダクト開発を円滑に進めるために不可欠です。プロダクトマネージャーは、SIerの構造を理解し、開発体制全体を把握することで、開発工程におけるリスクを最小限に抑え、成功に導くことが可能になるのです。
SIerと関わる上での注意点
プロダクトマネージャーがSIerと関わる上で、注意すべき点をいくつかご紹介します。円滑なコミュニケーションを図り、プロジェクトを成功に導くために、ぜひ参考にしてみてください。
ベンダーコントロールに注意
SIerに開発を委託する場合、納期や予算、品質などを適切に管理する「ベンダーコントロール」が非常に重要です。スムーズなプロジェクト進行と、期待通りの成果を得るためには、以下の点を意識しましょう。
- 契約内容の明確化
開発範囲、納期、費用、品質基準などを明確に契約書に記載し、双方で理解を共有しましょう。不明点があれば、事前に質問し、納得いくまで確認することが大切です。 - 定期的な進捗確認
定期的に進捗状況を確認し、課題や問題点を早期に把握しましょう。進捗状況報告書や会議などを活用し、コミュニケーションを密にすることが重要です。 - 課題共有と解決策
発生した課題や問題点を共有し、協力して解決策を見つけ出すことが大切です。SIerと連携し、迅速な対応を心がけましょう。 - SIerとの協力関係
SIerはプロジェクトを成功させるためのパートナーです。信頼関係を築き、協力的な姿勢でプロジェクトを進めることが重要です。
ベンダーコントロールは、プロジェクトの成功に大きく影響します。適切な管理を行うことで、納期遅延や予算オーバー、品質不良などのリスクを回避し、期待通りの成果を得ることが可能になります。
コミュニケーションは密に
SIerとのコミュニケーションは、プロジェクトを成功させるために非常に重要です。認識のズレや誤解を防ぎ、円滑な進捗を図るために、以下の点に注意しましょう。
- 密な情報共有
仕様書や設計書などのドキュメントは、しっかりと確認し、疑問点があればすぐに質問することが大切です。曖昧な点は放置せず、早期に解消することで、後々のトラブルを防ぐことが可能になります。 - 定期的なミーティング
定例会や報告会などを定期的に開催し、進捗状況や課題感を共有しましょう。お互いの状況を把握することで、問題点の早期発見や対応が可能になります。 - 積極的な意見交換
疑問点や改善点があれば、積極的に意見交換を行いましょう。建設的な意見交換を通して、プロジェクト全体の質を高められます。 - コミュニケーションツールの活用
チャットツールやビデオ会議システムなどを活用することで、迅速かつ効率的な情報伝達を実現できます。特にリモートワークの場合は、これらのツールが不可欠です。
これらの点を意識することで、SIerとの良好なコミュニケーションを築き、プロジェクトを成功に導くことが可能になります。
開発体制の理解を深める
SIerは多重下請け構造を持つことが多いため、開発体制全体を把握しておくことが重要です。誰が、どの工程を担当しているのかを理解し、必要に応じて、直接コミュニケーションを取ることも検討しましょう。
開発体制の理解を深めるためには、以下の点を意識すると良いでしょう。
- 開発体制図の確認
SIerから開発体制図を入手し、各工程の担当者や役割を明確に把握します。 - コミュニケーション体制の構築
各工程の担当者との連絡窓口を明確にし、必要に応じて直接コミュニケーションを取れる体制を構築します。 - SIerの文化や価値観の理解
SIerがどのような文化や価値観を持っているのかを理解することで、円滑な連携を図りやすくなります。
開発体制の理解は、プロジェクトを円滑に進めるために欠かせません。上記の点を参考に、SIerとの連携を強化しましょう。
SIerの将来性
従来型のSIerは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波を受け、ビジネスモデルの転換が求められています。ここでは、SIerの将来性について、変化の兆しと、今後の展望を解説します。
DX推進とSIerの役割
企業が競争力を高めるために、デジタル技術を活用したビジネス変革であるDXが求められています。SIerは、これまで培ってきたシステム開発のノウハウを活かし、企業のDX推進を支援する役割を担うことが期待されています。
AI、IoT、クラウドなどの最新技術を習得し、顧客企業のニーズに対応できるかが、今後のSIerの成長を左右するでしょう。
SIerから脱却?新たなビジネスモデルへの挑戦
従来型の受託開発中心のビジネスモデルから脱却し、自社プロダクト開発やサービス提供など、新たなビジネスモデルに挑戦するSIerも増えています。
顧客企業との長期的なパートナーシップを構築し、コンサルティングからシステム開発、運用・保守まで、ワンストップでサービスを提供することで、収益の安定化を目指しています。
SIerと関連性の高い職業
IT業界には、SIerと関連性の高い職業が数多く存在します。ここでは、プロダクトマネージャーが知っておくべき、関連性の高い職業をいくつかご紹介します。
コンサルティングファーム
企業の経営課題に対し、専門知識やノウハウを活かして解決策を提案する企業です。ビジネス戦略、IT戦略、業務改革などを専門とするコンサルタントが在籍しており、SIerと連携して、大規模なシステム導入プロジェクトを支援することもあります。
Web系企業
インターネット関連のサービスを提供する企業です。自社でWebサービスやアプリを開発・運営しており、プロダクトマネージャーは、顧客ニーズを捉えたサービス企画や、開発チームとの連携などを行います。
SIerとは異なり、スピード感のある開発体制や、データに基づいた意思決定などが特徴です。
事業会社
IT企業以外で、自社の事業を支える情報システムを運用している企業です。社内SE(システムエンジニア)として、情報システムの企画・開発・運用・保守などを担当します。SIerと連携して、システム導入や改修を行うこともあります。
SIerに関するよくある質問
最後に、SIerに関するよくある質問に答えます。
Q. SIerで働く際に、どのようなスキルが求められますか?
SIerでは、顧客のニーズを理解し、システム開発や運用を円滑に進めるために、様々なスキルが求められます。
具体的には、プログラミングスキル、設計スキル、コミュニケーションスキル、問題解決能力、プロジェクトマネジメントスキルなどが挙げられます。また、近年では、クラウドコンピューティングやAIなど、新しい技術への対応能力も重要です。
Q. SIerってどんな人が向いているの?
SIerは、論理的思考力や問題解決能力、コミュニケーション能力などが求められる仕事です。また、常に新しい技術を学び続ける姿勢も必要です。さらに、顧客のニーズを理解し、最適なシステムを提案する、高いコミュニケーション能力も求められます。
Q. SIerで働くメリット・デメリットは?
メリットは、大規模プロジェクトに携われる点や、幅広い業界の知識・経験を積める点などが挙げられます。一方、デメリットとしては、多重下請け構造による残業時間の増加や、顧客の要望に振り回される場合がある点などが挙げられます。
Q. SIerで働くことは、将来のキャリアパスにどのような影響を与えるでしょうか?
SIerでの経験は、幅広い技術や業界知識を習得できるため、将来のキャリアパスに多様な選択肢を生み出す可能性があります。一方で、特定の技術に特化する機会が少ない場合もあるため、専門性を高めたい場合は、転職を検討する必要があるかもしれません。
まとめ|SIerへの理解を深め、プロダクト開発を成功させよう!
SIerと連携する際の注意点や、SIerの将来性などを理解しておくことは、プロダクトマネージャーとしてキャリアアップを目指す上で非常に重要です。ぜひ、今回の内容を踏まえて、SIerへの理解を深め、プロダクト開発を成功に導いてください。
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